Snapchat
Snapchatが若者世代の心を掴んだ方法とは
Snapchatが若者世代の心を掴んだ方法とは
Snapchatは2011年、Stanford Universityの学生三人組によって作られたSNSである。Snapchatが特徴的であったのは、ターゲットにフィットしたサービスであったこと、ユーザーのエンゲージメントを高めるシステムを構築したこと、そして口コミを活用したことであった。
2011年の初め、Reggie Brownは「消えていく写真」というアプリのアイディアをEvan Spiegelと共有した。この一年前に、EvanはFuture Freshmenという、大学のアプリケーションに関して高校生にアドバイスをするという事業をやって失敗したばかりだったが、Snapchatのアイデアに感銘を受けたEvanはReggieとともにビジネスを始めることにした。
SnapchatのアイデアはStanford内ではヒットせず、多くの学生が馬鹿にしたが、ReggieとEvanは諦めることなくSnapchatのアイデアを深め、Bobby Murphyというコーディング経験のある知り合いをプロジェクトに引き込むことに成功し、数ヶ月後の2011年7月、ついにSnapchatの前身となるアプリ”Picaboo”をiOS上でリリースした。アプリのコンセプトは「自分の自然体を切り取り、感情を自由に表現すること」だった。Picabooは元々写真にフィルターなどのエフェクトや文字を書くといった編集ができる機能がメインであり、10秒間だけ写真を閲覧することができるというものだった。
しかし、Picabooが普及し発展する以前に、リリースの少し後、Picabooは社名が同じ他の会社から排除措置の手紙をもらったため、社名をSnapchatに変更しなければならなかった。そのような経緯でPicabooはSnapchatになったのだが、ちょうどその頃、Snapchatの有名なマスコットキャラクター”Ghostface Chilah”がReggieによってデザインされ、Snapchatのイメージは確立され始めていった。結局Snapchatは社名を変更した1年後に同社に対して訴訟を開始し、Snapchatは2014年に1億5750万ドルで訴訟を解決している。
Snapchatはリリースまでスムーズに成功したとはいえ、肝心な顧客層であるmillenialsの間で全く広まっておらず、人気とは程遠い状況であった。Evan達はStanfordのコミュニティを利用するだけでなく、彼らが住んでいる街の人にまで直接アプリを売り込む必要があると考え、さまざまな方法でマーケティングを行なった。人々に1対1でアプリの使い方を教え、何が面白いのかを説明し、時に彼らのためにアプリをダウンロードしてあげたり、ショッピングモールでは通りすがった人にフライヤーを配ったり、ジャーナリストにも自分達のサービスを扱ってもらうよう売り込んだり、思いつくことをなんでもした。Reggieに至っては、Snapchatでは下世話なことでも送り合える(写真が一定時間経つと消えるため)と謳ってサービスを売り込もうとまでした。
しかし、これらのマーケティングはどれもうまくいかなかった。Picabooは2ヶ月でたったの127人しかユーザーを獲得することができなかったのだ。
ここで流れが変わったのは、Evanの母がEvanの従兄弟にSnapchatの存在を共有した時であった。Evanの従兄弟は現役の学生であったのだが、彼はSnapchatを絶賛し、友達にSnapchatを宣伝していった。その後口コミでSnapchatはカリフォルニア南部を中心にすぐに広まっていき、2012年の初めにはアクティブユーザーが3万人になっていた。学生は、授業中に先生から隠れてメモを渡し合う感覚でSnapchatを気軽に活用していたのである。そこでEvan達はヒントを得て、すぐに顧客層をGeneration Zへとピボットし、Snapchatのコアユーザーが10代の若者になるようUIやシステムをシフトさせていった。
10代をターゲットにするにあたって、Evan達はSnapchatを10代の若者が感覚的に使いやすいような仕様へと変化させた。具体的には、使っていてストレスを感じないようなアプリを目指したのである。
まず、アプリを起動したらすぐにカメラが起動するように設定することで、ユーザーがすぐに写真を撮りたくなるように仕向けた。10代のGeneration Zの若者は幼い頃からスマートフォンに親しんでおり、感覚的に理解できるUIを好むため、すぐに写真が撮りたくなるような仕様に変化させたのだ。従来の写真共有アプリではアプリを起動するとメディアを表示するのが一般的であったが、カメラを自動で起動させることによってスムーズに写真を撮り、かつそれを共有できるようになった。
他にUIを変更したポイントとしては、既読したかどうかわかる機能をつけたということが挙げられる。既読機能をつけたことによって、返信が比較的遅れがちな若者世代にも返信を促すような仕組みにした。返信が来るかどうかが、送信者のことをリスペクトしているかどうかに読み替えさせるような仕組みにしたのである。
また、snapやチャットが確実に一時的であるようにセキュリティ面が強化された。ハッキングされることでsnapが永続的に見られるようになってしまえば、Snapchatの魅力である一時性を失ってしまうからだ。特に、Snapchatでsnapを送り合う機能は一時的で一回しか見れないからこそ、若者世代にとって親しまれていたのであり、セキュリティやプライバシーの観点からも一時的であることを確実に貫かなければならなかった。
このような少しずつの 変化がUXを向上させ、Snapchatは多くの若者に使われるようになったのである。
Snapchatの1番の成長の秘訣はアプリ内のシステムに隠されていた。それは、一人一人のコミュニケーションを大事にするというものだった。Evan達はそのほうがアプリへの貢献度が上がると推測したのだ。
実際、何人かでグループチャットをしている際、メンションされない限り自分が必ずしも返信しなくてもいいような気がすることも多いだろう。そうやってアプリをだんだんチェックしないユーザーが増えていってしまうのではないかと考えたSnapchatは、ユーザーは基本的にsnapを一人または複数名の個人に送るようなシステムにした。これは、受け取った人は、snapを送ってきた人が何人に同じsnapを送っているのかわからない上、構造上一対一のコミュニケーションに感じる(一人のユーザーから送られてきているため)。そうすることでメッセージを受け取った人が返信しやすく、また返信したくなるようなコミュニケーションの体制を作り上げることに成功し、Snapchat内は送受信するメッセージ量が増え、ユーザーのSnapchatへの貢献度も高まっていったのだ。
また、Snapchatの最大の強みである一定期間しか見えない消えていくsnapというのが若者世代の人気を呼ぶ秘訣となった。時代やトレンドに乗り遅れたくない、友達の会話から乗り遅れたくない若者にとって、友達の日常のsnapであっても見逃すことは論外である。Snapchatを確認する習慣がユーザーの中に定着したことで、Snapchatのユーザーはアプリにのめりこんでいったのだ。
そしてSnapchatが他のサービスに比べて特徴的であったのは、口コミを通して知名度を上げていったということである。スマホアプリの知名度を上げるうえで、口コミというなんともアナログな方法が活躍することは少ないが、同じ地域に住んでいて同じ学校に通う若者たちの間で知れ渡るには口コミのほうがむしろ、意外にも、スムーズで早い知名度の上げ方であったのだろう。
こうして、2012年の初めには、これらの戦略を活用したSnapchatは、ユーザーを100万人以上獲得し、一秒間にやり取りされるsnapは231枚にものぼり、これまでにSnapchatでは5億枚以上のsnapがやり取りされたと言われている。
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https://timelines.latimes.com/snapchat-stanford-ipo/